1884年(明治17年)に紙製品の製造販売を目的として創業し、原稿用紙の扱いでは、文豪・夏目漱石、芥川龍之介、徳田秋声らの愛顧を得てゆく。特に芥川龍之介が愛用し、青い枠線・左下の同色の店名の入った原稿用紙を、現在でも各地の文学館の催し等で度々目にすることができます。駒場の日本近代文学館の芥川龍之介展でも展示原稿のほとんどが松屋製。甲府の山梨県立文学館でも芥川直筆の松屋製の1枚が展示されていた。
松屋は昭和19年、戦局悪化の中、空襲による類焼防止のための建物疎開命令で店舗を解体。店の裏(西側)にあった土蔵を残して、路地(落第横丁)の北側に工場を移転して営業再開。創業69年目の1955年(昭和30年)になって紙屋「松屋」は解散しました。
1980年(昭和55年)に至って、残っていた土蔵も解体され「松屋」の面影は完全消滅。元の工場だった木造の建物には、少し前までは「ネオシッティングルーム」というカフェが入居していたが、現在は中華料理店が営業中。「赤門ロイヤルハイツ」のビルの北端部分が紙屋「松屋」でした。
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