2013年01月15日

名古屋 阿部定の足跡 中村遊郭

阿部定が名古屋の中村遊郭に娼妓として紹介屋を介して住み替えて来たことは間違いないのですが、「予審尋問調書」だけ読んでいると混乱が生じて年月日があいまいになってくるのです。年表を作成したいのですが、「22歳の正月に」とかが満年齢なのか数えで言ってるのか・・・資料によっては別の場所で短期間だけ働いていたり・・その期間があいまいだったりして・・時間経過がゆがんでくるのです。
1927年(昭和2年)の正月から大阪・飛田遊郭の御園楼に約1年間住み込み、その後、同じ大阪の朝日席で約半年間働く(調書ではこの間が欠落してる)・・1929年(昭和4年)1月には満年齢で23才・・調書では「翌年早々、23歳の時名古屋市西区羽衣町の徳栄楼に前借二千六百円くらいで住み替えました」・・ここでは翌年早々を「1929年(昭和4年)1月」にしておきます。
阿部定は調書で「徳栄楼では二年ぐらい働きましたから、この頃は思い出の多かった時代です」と述べ、「貞子という源氏名で一生懸命働きましたので、売れっ子になり、可愛がられるようになりました」と続ける。この中村遊郭で働くうちに「チフスを患ったりして、だんだん商売が厭になったので、どこかえ住み替えようとして、無断で店を出て・・・」となり結局その後、大阪の松島遊郭に流れて行きます。

当時、この中村遊廓は、大須観音の近くにあった旭遊郭が廃止になり1923年(大正12年)4月に移転・開設されたもので、阿部定が住み替えてきた時はまだピカピカの状態。遊郭内は南側から順に賑町・羽衣町・大門町・寿町・日吉町の5町で構成され、この町名は現在もそのまま存続してます。阿部定の「羽衣町の徳栄楼」は下図で見ると下から2段目の通り・・通りの両側の建物がその町名となるのですが・・調査不足というか資料が見つからないまま。戦後の妓楼名はかなり詳細に判明してるのですが・・・。ここでまた永井荷風を尊敬してしまいます。空襲で焼け野原となり灰燼にきした玉の井の姿を見取り図に残していたのですから。昭和初期の妓楼名・位置が判る資料はあるのだろうか。
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中村遊郭跡の羽衣町の通りを名古屋駅方向(東向き)を奥にして撮影 かってはすぐ左側に遊郭「金華」その先には「第2松岡」がありました 現在は後ろにソープ・アラビアンナイトとハーベストムーンが向かいあって営業中 阿部定が在籍した「徳栄楼」は・・・この通りの前なのか後ろの方なのか・・・辿りつけません
(右)地図は上が北方向・・中村遊郭の敷地面積は約3万2千坪で東京・新吉原より広いといわれてます・・樋口一葉が描写した「お歯黒どぶ」と同様の堀が、この中村遊郭でもかっては存在してました。現在は全て埋め立てられ細い路地がその痕跡として残ってます・・その路幅は吉原とほとんど同じです。
中村区史には、大正12年の客数65万5千・・昭和12年が全盛で貸座敷数138軒・娼妓2千人。戦後はすぐに「名楽園」と改称し、売防法施行前の昭和32年12月27日に一斉に廃業。現在はその遊郭跡の所々で10軒ほどのソープランドが営業してるのみです(地図にSのマーク)。
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現在は営業形態を料理店や一般の会社などに変更して存続しているかっての独特の建物・・「中村遊郭跡」として別にアップする予定です。

「上野 阿部定の足跡 坂本町の長屋跡」http://zassha.seesaa.net/article/312996652.html
「兵庫・篠山市 阿部定の足跡 京口新地」http://zassha.seesaa.net/article/313095541.html
「神田 阿部定の足跡 出生地と小学校」http://zassha.seesaa.net/article/313356355.html
「上野 阿部定の足跡 星菊水」http://zassha.seesaa.net/article/312979470.html
「日本橋浜町 阿部定の足跡 浜町公園」http://zassha.seesaa.net/article/316491763.html
「大津 阿部定の足跡 地蔵寺」http://zassha.seesaa.net/article/316571479.html

参考資料
 裁判予審調書
「阿部定正伝」1998年刊・情報センター出版局
 映画「愛のコリーダ」大島渚監督(定役=松田英子)1976年10月公開
「坂口安吾全集5」1998年刊・筑摩書房(「阿部定さんの印象」)
「織田作之助全集5」1970年刊・講談社(P249からの「妖婦」)
 その他
posted by t.z at 02:16| Comment(0) | 各地various parts of japan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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