*1985年(昭和60年)12月13日号の「フォーカス」誌に突如として阿部定事件の警察撮影の現場写真が流失・掲載されました(無修正)。敷布の「定吉二人キリ」の血文字と左太もも外側の「定吉二人」の包丁による刻み文字、そして左上腕部の「定」の文字が初めて確認できました。局部周辺はモノクロ写真のため陰毛の影か血糊か判別のつかない黒っぽい影に覆われてます。写真は載せません・・グロいのは苦手です(エロいのは止せと言われても載せるのですが)。ネットで画像検索すれば見れます。
午前8時頃に1階に降りた阿部定は「水菓子を買ってきますから、昼頃まで2階の旦那は起こさないで」と女中に頼み、自ら電話をして満左喜と提携している呼び付けのタクシー(三業タクシー・運転手小林某)で待合「満左喜」を去って行きます。犯行発覚は阿部定の言葉もあったため午後2時半になった頃・・・阿部定30歳・・21世紀まで語り継がれる大猟奇事件の発生です。
待合「満左喜」を去ったタクシーは新宿に・・阿部定は伊勢丹の角で下車(午前8時半)し徒歩で新宿駅に。ここで円タクに乗り込み午前9時頃には松坂屋上野店前に。阿部定はここで逃走準備のため衣服を買い改め(小野古着店で着物・履物)、神田に宿泊(神田区淡路町2-8萬代家旅館)していたパトロンの名古屋・中京商業学校校長(市会議員)の○宮五郎氏(46歳)(尾久署で参考人として取調べを受けるが釈放・・とばっちりです・・新聞に実名どころかその出自も詳細に発表される)に電話連絡、神田須田町交差点の萬惣果物店前(現存・営業中)で待ち合わせる(午前10時)。落ち合った二人は日本橋の喫茶店に入るがすぐに昭和通り沿いのそば屋に移る(午前11時半)。定が食したのは天丼。そして正午頃、西巣鴨の「みどり屋旅館」に円タクで向かいます。ここで大宮と情交し(定は精神的に乗れずおざなりで1回))、金10円を受け取る。午後1時過ぎ頃、旅館を出た二人は又も円タクに乗り込み校長は本郷・壱岐坂で下車、定は一人で新橋6丁目に向かうのです。(時間経過は「阿部定正伝」は場所・時間の表現が違ったり記されていなかったりなので当時の新聞を参照してます)
新橋6丁目の中通りで阿部定は再び古着屋「あづま屋本店」(写真が新聞に載る)で衣服を買い変装を行っている(午後3時)。眼鏡まで買い求めているのです。この頃、午後2時半すぎになって待合「満左喜」では物音の聞こえないことを不審に思った女中が2階に上がり・・・絶叫!。
午後3時40分、浜松町方向に。発覚したことを知るすべもない阿部定は新橋6丁目の市電停留所前の寿司店で食事、食べきれない分を持ち帰りにしてもらい銀座方向に歩いて向かう。喫茶店コロンバンに入った後、再び歩き昭和通りに。
ここでやっと表題の「浜町公園」の登場です。昭和通りから円タクに乗った阿部定は「局部」を入れた紙包みと持ち帰りの寿司を抱えて浜町公園に入ってゆきます。この公園のベンチに座り寿司(海苔巻き)を食べながら4時間ほど黙然と「行く末」を考えていたようです。公園前の喫茶店で新聞で事件の確認をし、発覚していない事に安心して東京市内で泊まることに決してます。夜10時頃に浅草の旅館に宿泊・・そして阿部定は翌朝の新聞で自身が全国に知れ渡る犯罪者になったことを知るのです。
翌日は日本中が阿部定の姿を探して「てんやわんや」(この表現久しぶりだがピッタリ)の騒動に。噂だけで銀座を通行止めにして捜査したり、横浜にも捜査本部が置かれたり、高飛び説を説く新聞。神田や日本橋、いや東京駅にいたという目撃情報が乱れ飛ぶ。芝の喫茶店では遂に定が捕まったとのデマに愛宕署員が急行。大阪・難波駅では怪しい女が苦悶・逃げ足で立ち去る・・・ついに新聞の見出しには自己批判の「お定の影を追うナンセンス」。こうして「阿部定」の名は日本中に喧伝されたのです。
「上野 阿部定の足跡 坂本町の長屋跡」http://zassha.seesaa.net/article/312996652.html
「兵庫・篠山市 阿部定の足跡 京口新地」http://zassha.seesaa.net/article/313095541.html
「名古屋 阿部定の足跡 中村遊郭」http://zassha.seesaa.net/article/313453094.html
「神田 阿部定の足跡 出生地と小学校」http://zassha.seesaa.net/article/313356355.html
「上野 阿部定の足跡 星菊水」http://zassha.seesaa.net/article/312979470.html
「大津 阿部定の足跡 地蔵寺」http://zassha.seesaa.net/article/316571479.html
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