川端は「古都」・「美しさと哀しみと」両篇の執筆のため京都に家を用意しており、すでに先斗町の花街で名が知れてきた「瓢正」を誰かに紹介され知ったのでしょう。1952年(昭和27年)に創業した「瓢正」は、周辺(先斗町)への開店挨拶に用いるために「笹巻きずし」を考案し配り回っている。小説に登場した頃には「笹巻きずし」は、先斗町歌舞練場の楽屋見舞や手土産として名物となっていたのでしょう。
「古都」(新潮文庫版)P100から <千恵子たち、親子三人は、中庭にのぞむ、奥の座敷で、夕食に向っていた。「今日は、島村はんから、瓢正の笹巻きずしを、たんといただきましたさかい、うちでは、おつゆだけで、かにしてもらいました。」と、母は父に言った。「そうか。」 鯛(たい)の笹巻きずしは、父の好物である。>
えっ、それだけ。これだけです。全9章が観光名所案内記風に書かれたこの小説では老舗といえど、ほぼ1行。セリフに店舗名だけ登場して通り過ぎてしまう場合が多いのです。(文庫版では)「瓢正」はなんと5行も費いやされているのです。
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