2013年11月20日

千駄木 喫茶 乱歩°

<<それは九月初旬のある蒸し暑い晩のことであった。私は、D坂の大通りの中ほどにある、白梅軒という、行きつけの喫茶店で、冷しコーヒーを啜っていた。>>
江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」に触発されたかのような、S坂の中ほどにある(乱歩仕様の)喫茶店で温かいコーヒーを啜りながら、向かい側にあるはずの古本屋を眺めようとしてしまう(窓はあるが外は見えない)。明智小五郎の幼馴染で、官能的で男をひきつける美人の女房が店番でいるかもしれないのだから。
ここは急勾配のD坂ではないし古本屋などあるわけがない、気付くのが遅いのだ。緩く長いS坂の中ほどで、店の名も違っているではないか。ここは「白梅軒」でなく「蘭歩亭」だ。
<<マスターがお客相手に、上野駅際のガード下で起きた陥没事故の話をしていた。お客といっても、近所の馴染みで、繭美(まゆみ)も顔見知りの時計屋のだんなだ。蘭歩亭はフリの客も少なくないけれど、近所のひま人の、ちょっとした溜まり場のようになっていることが多い。客はひとり客ばかり四人いた。>>
あれっ、内田康夫の「上野谷中殺人事件」ではマスターは普通におしゃべりしているが、目の前では店の手伝いの女が大声でオーダーを伝えている。老マスターは耳が遠く、女は更に声を張り上げる。客と会話するはずもなくカウンターの向こうに消えるように座っている。
ここは「白梅軒」でなく「蘭歩亭」でもなく、歩に°が付く喫茶店「乱歩°」だった。
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「D坂より308歩」は正しい 不忍通りの団子坂下交差点から三崎(さんざき)坂を200mちょっと歩くと店に着く
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店の営業情報は左右写真で 「平日だからすいてるだろう」と安心してリピートしたら(定休日は月曜)右写真の貼り紙・・・
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内田康夫「上野谷中殺人事件」文庫版1991年刊 「乱歩°」は「蘭歩亭」として登場します 上記の引用はP17から 地図の三崎坂の「菊見せんべい」も名称だけですが書かれています
地図の左(西)端に記入した団子坂上の「三人書房」は江戸川乱歩が自宅を兼ねて開業した古書店です ここを舞台にして乱歩の代表作の一篇「D坂の殺人事件」が執筆されました

 
西ヶ原 作家・内田康夫 生誕地http://zassha.seesaa.net/article/202012896.html
沼津・獅子浜 作家・内田康夫小学校時代疎開地(本能寺)http://zassha.seesaa.net/article/237786553.html
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posted by t.z at 06:23| Comment(0) | 東京東南部tokyo-southeast | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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