2013年12月17日

京都 書店そろばんや 織田作之助「それでも私は行く」から

織田作之助の戦後間もない京都の繁華街を舞台にした新聞小説「それでも私は行く」(1946年4月25日〜7月25日京都日日新聞夕刊に連載)から「千切屋旅館別館」「三嶋亭」に続いて第3回目<書店そろばんや>。
先斗町のお茶屋「桔梗屋(ききょうや)」の美貌の三高生・鶴雄(主人公)が、河原町三条から寺町通の「小田策之助」(織田作之助)がいる錦ビル4階(実際は3階だったか?)の「世界文学社」(実在)に向う途中に立ち寄った書店「そろばんや」・・・織田作も<妙な名前の本屋>と書いているが、変な名の書店はそのままの名で実在していました。が、現在は跡形もなく消えている。(地図を参照すると手っ取り早いのだが)河原町三条の交差点から三条商店街に入って4軒目(!)なのだが・・・・?
「それでも私は行く」から抜粋
<<鶴雄は河原町の方へ歩き出した。アンテナをつけたM・Pのジープが通ったあと、三条河原町のゴーストップの信号が青に変った。西へ渡って、右側のそろばん屋という妙な名前の本屋へ、鶴雄は何の気なしにはいって行った。新刊書の書棚を見て廻ったが、べつに手にとってみたい本もなかった。
「改造」「中央公論」「世界」「人間」「展望」など、一流の雑誌はすぐ売り切れるのか、それとも店頭に出ないのか、見つからなかった。「世界文学」という雑誌があったのでパラパラめくっていると、「君は鋭いね」という文句が眼にとまった。ジイドの「架空のインタヴュー」の訳文にある言葉だった。鶴雄はふと、弓子の言葉を思い出した。「――鋭いわね。あなたは……」
やがて、「そろばん屋」を出ようとした途端鶴雄は、ふと「アメリカとは何ぞや」という青い表紙の薄い本を見つけた。(略)>>
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河原町通から鶴雄が西へ渡ったところ 三条商店街です・・・後ろにゴーストップの信号がある・・・右側のそろばん屋という妙な名前の本屋へ 右側です
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そろばん屋なんて名どころか本屋さえ無い・・・地図だとこの辺り・・・小説執筆時から70年が経とうとしている 昔の店舗の間口幅とは変っており見当がつかない 三条通右側には江戸期からの老舗も残っている・・・ヒント発見!仏具の老舗「吉田仏具」の右隣りが「書店そろばんや」だった・・・現在はパチンコ店「FIBER」になっている 鶴雄は何の気なしにここへはいって行ったのだ 鶴雄はその後 三条通を進み寺町通角の三嶋亭の前を左に折れて「世界文学社」に向って行く。

織田作之助リンク
京都 三嶋亭 織田作之助「それでも私は行く」からhttp://zassha.seesaa.net/article/380550110.html
京都 織田作之助が執筆に使った「千切屋別館」http://zassha.seesaa.net/article/379223394.html
本郷 喫茶店「紫苑」の織田作之助と太宰治http://zassha.seesaa.net/article/381424205.html
大阪 阿倍野 料亭「千とせ」跡 織田作之助http://zassha.seesaa.net/article/382857023.html
大阪 口繩坂 織田作之助「木の都」よりhttp://zassha.seesaa.net/article/381516708.html
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posted by t.z at 23:57| Comment(0) | 京都kyoto | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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