小津の日記に集中して「大阪」が登場するのは、1961年(昭和36年)6月以降で、6月8日に横浜より「第二こだま」に乗車し、大阪に向っている。大阪で下車し、車で宝塚入り。阪急今津線の宝塚南口駅に近い武庫川南岸の旅館「門樋」に逗留する(P714)。創立10周年を迎える宝塚映画が、松竹の小津安二郎を記念作品「小早川家の秋」(「こはやがわけ」と読み)製作のために招聘したもの。翌日6月9日には神戸元町の「ユーハイム」(旧本店=現アーケードの場所ではない)を訪れており、11日は京都にロケハン、14日は伊丹、19日は大阪の東宝でプレス会見。会見後に「吉兆」に招宴され、夜は北のクラブオータに。21日には城の見える風景をロケハンし、(ガスビル南館の西に本店を構える)美々卯でうどんすき、道頓堀の夜景をみて電車(阪急)で西宮経由で宿に帰っている。この日が「菱冨」に最接近している。23日までにロケハンは終了し、クランクイン(セット撮影の日が多くなる)を迎えている。宝塚を拠点にして関西圏に、9月まで滞在していたが、日記には「菱冨」の店名記入は無いまま。確証ある訪問日は不明。
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大阪市中央区宗右衛門町7-6 菱富ビル
営業時間 11時30分〜21時
定休日 木曜(7月・12月は営業)
*参考 「全日記 小津安二郎」フィルムアート社
「小津安二郎 東京グルメ案内」(巻末付録の「グルメ手帖」)朝日文庫
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