2014年02月26日

神戸 ユーハイム本店 小津安二郎の「日記」から

<1961年(昭和36年)6月8日(木曜)晴 早く起床 荷造り>
小津安二郎は、この日の午前中から荷造りを始め、午後2時52分の横浜駅発「第2こだま」に乗車する。松竹大船の監督である小津が、東宝(宝塚映画製作)から招聘されて、「小早川家の秋」のメガホンをとるためだ。「日記」は<大阪9時着 車にて宝塚門樋泊>と続く。
*「門樋」は撮影期間中に逗留した旅館名
翌日の日記から <6月9日(金曜)小雨 車が十一時にくる 池田の小林逸翁美術館を見学して 池田から十三(じゅうそう=地名)  十三から神戸 ユーハイムにて珈琲 西灘を見て 三宮 宝塚に帰る 牛肉美味 北川 大阪つる家から電話あり 入梅に入つた模様也> P714
小津は翌日から早速、関西圏のロケハンを開始する。神戸のユーハイムに立ち寄ったのは、この日のスケジュールからして午後であることは確実だろう。現在、ユーハイムは元町商店街に本店があるが、小津が訪れた当時は生田区下山手通2丁目(旧表示=1980年より中央区)に洋館の店舗を構えていた。ユーハイムの創業以来の歴史は同店のHPに詳細が掲載(洋館の画像も有り)されているので参照http://www.juchheim.co.jp/して下さい(会社情報の中に社史有り)。
小津が残した住所録風の手帖にユーハイムの住所が記載されているので引用。
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 神戸スペイン料理カルメン
 坂(阪の意)急三宮西口を北に入る
 フラメンカ・エッグ

 出雲大社町 荒木屋
  割子ソバ

 ユーハイム
 神戸市生田区下山手通二ノ五
  バウムクーヘン
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「日記」には<ユーハイムにて珈琲>だが、手帖には<バウムクーヘン>。1919年に日本で初めてのバウムクーヘンを焼いたユーハイムを訪れたなら、小津もコーヒーとともにバウムクーヘンを賞味していたはず。
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小津の訪問から27年後に移転オープンした(1988年11月)元町アーケードの新本店
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2階のティールームでなく地下の落ち着いた雰囲気のレストランのテーブルにつく バウムクーヘンセット・ドリンク付き800円
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ユーハイム本店 神戸市中央区元町通1-4-13
 営業時間10時〜20時(1階売り場) B1レストラン・2Fティールームの営業時間は要確認
 定休日 第3水曜日

「ユーハイム」の商品が小道具として登場する小津作品2本。最初に「小早川家の秋」宝塚映画1961年10月29日公開の1シーンから。この作品の撮影準備中(ロケハン)にユーハイム本店を訪れていた。
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「小早川家の秋」の1シーンから 原節子が買ってきたユーハイム(中身は不明)を司葉子に進めるシーン 「お菓子かってきたんだけど・・・」「この次ごちそうになりますわ」
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松竹大船作品「彼岸花」1958年9月7日公開 小津が手がけた最初のカラー作品にもユーハイムが登場する 浪花千栄子の聖路加病院(在りし日の建替え前の姿が見れる)の病室シーンで画面右端のテーブル上に何気なく見舞い品?として登場。「小早川家の秋」と同型に見える。
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ユーハイムの包装紙 箱の中身はバター味が濃厚(基準があるから当然)なバウムクーヘン(商品名リーベスバウム)

手帖に並記されている「スペイン料理カルメン」(元町駅から1つ大阪寄りの三宮駅が最寄り)の写真を追加
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本邦初(1956年創業)のスペイン料理専門店で 小津が記入したメニュー「フラメンカ・エッグ」(卵料理・800円)も<カルメン伝統の逸品>として健在 土曜にはフラメンコのライブイベントも有ります(定休日 月曜)

参考
「全日記 小津安二郎」フィルムアート社1993年刊
「小津安二郎 東京グルメ案内」朝日文庫(巻末付録「グルメ手帖」)
posted by t.z at 23:55| Comment(0) | 関西kansai | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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