池波正太郎の随筆集「よい匂いのする一夜」の一章「倉敷市 倉敷アイビースクエア」より
<大原美術館、民芸館、郷土玩具館などが、石造りの見事な調和を見せている一角に、コーヒー店〔エル・グレコ〕は健在だった。蔦(つた)に埋もれた二階建ての民家を改造した、このコーヒー店はあまりにも有名になってしまったけれど、いまも、むかしのままで、少しも変っていない。分厚い木製のテーブルとベンチ。温かいコーヒー。親切なもてなし。うるさい音楽も使わず、若い人たちのひかえ目な会話がきこえるのみだ。はじめて倉敷を訪れたとき、私は、この店へ旅行鞄をあずけて、町を歩き、大原美術館や民芸館を見てまわったものだ。当時は、たしか、こうした店は〔エル・グレコ〕だけだったような気がする。>
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参考
随筆集「よい匂いのする一夜」池波正太郎 講談社文庫1986年刊
(単行本初版1981年平凡社)
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