2014年05月03日

京都 阿国(おくに)歌舞伎踊 有吉佐和子「出雲の阿国」から

安土桃山時代に「出雲の阿国」と呼ばれた女芸能者が存在し、江戸期以来、歌舞伎の始祖とされてきたが、その実在を証明できる信頼性のおける史料は僅かである。同時代の公家・西洞院時慶( トキヨシ)(旧名は時通1587〜1639)の残した日記「時慶卿記( トキヨシキョウキ) 」の慶長5年7月1日ノ条(関ヶ原開戦寸前)に、、「クニ」と「菊」の名が書き留められているのみである。この日記には、公家としての日々の生活と禁裏での公務の模様などが、その死の年まで長きに渡り書き記されている。自筆原本は、天理図書館に1冊、西本願寺に19冊が所蔵されており、京都市北山の府立総合資料館には江戸時代中期の写本72冊(西本願寺蔵本より)が所蔵されている。
府立総合資料館貴重書データベースhttp://www3.library.pref.kyoto.jp/infolib/meta_pub/G0000013RAREBOOKS_190
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四条大橋北詰の元の北座西側に建つ出雲の阿国像
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(左写真)四条大橋東詰の南座 左奥に元の北座と出雲の阿国像 護岸工事もなされぬ以前の鴨川河原の柳の枝の合間にお国一座は小屋がけしていたのであろう (右写真)北山の府立総合資料館正面玄関奥の踊り場(写本を請求しても読解不能で写真撮影も不可なので目にしていません)

<近衛殿ニテ晩迄雲州ノヤヤコ跳、一人ハクニト云、菊ト云、二人、其外座ノ衆男女十人計在之>
雲州(出雲)のややこ跳(踊り)をするクニと菊、その他に座のもの男女十名、史実として確実なのは以上である。その生年、没年も不明。断片的資料を基にした推察や伝承から数多くの俗説が生まれ、虚像「出雲の阿国」が形成されてきたが、庶民大衆の間で「歌舞伎踊り」が支持されたことは間違いないのだ。
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史実として確証されている阿国がややこ跳(踊り)をおこなった御所内近衛殿跡(森となっている 白壁側は桂宮邸)(左右写真)
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(左写真)現在、京都南座の川端通側に「阿国歌舞伎発祥地の碑」が置かれている 右側の電柱下の所 説明板には<慶長8年((1603)この辺り鴨河原において歌舞伎の始祖出雲の阿国が初めてかぶきをどりを披露しました> 
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現在の井筒八ツ橋本舗北座ビルの川端通角に置かれた北座跡碑 江戸初期に四条河原に存在していた芝居小屋七座のひとつ 南座と共に明治期まで残っていたが1892年(明治25年)の四条通拡張計画に伴い解体消滅した

戦国期(文禄・慶長年間)に堺の町衆だった高三隆達(たかさぶ・りゅうたつ)が節を付けて歌い広め、上方を中心として一大流行歌となった隆達節(りゅうたつぶし)という歌謡がある。織田信長が聞いたと窺える逸話(わらんべ草)も残されている。この隆達節が顕著に阿国の歌舞伎踊の歌詞に摂りいれられているのだ。
有吉佐和子の小説「出雲の阿国」(「婦人公論」1967年1月号から1969年12月号まで連載 中央公論社1969年刊)には、この隆達節を中心に様々な室町小唄が散りばめら、阿国の周辺に音曲の調べが流れるような効果を与えている。作品中に隆達節が計11首挿入されている。いくつかを拾い出してみる。
<ひと夜ふた夜となれそめて さても諸白髪 もろしらが>P50 この後、隆達節の説明が丁寧に記されている。
<末もとほらぬ 薄情中 うすなさけなか いまさら物思ひ>P51とお国も口遊ぶ。
<心なしとは それ候よ 冴えた月夜に 黒小袖>P201
伏見城を大地震が襲う描写に<竹の丸橋いざ渡ろう 瀬でも淵でも落ちば諸共に>P390 この歌は下巻P420にも2回採取されている。

晩年の阿国には、伝承すら多くは残っていない。小説の世界では、阿国は赤い大岩に足を砕かれ、舞い踊り続けられなくなってその一生を終えてゆく。
<お国の祥月命日は、一月二十五日、それはお国が十七歳のとき天満天神の鷽替(うそかえ)に出会したのと同じ月日であった。>有吉佐和子「出雲の阿国」から
出雲大社の近辺にクニ(阿国)のものと伝承される墓があり、京都・大徳寺塔頭の戦国大名細川忠興(ガラシャの夫)が建立した高桐院(こうとういん)にも墓が存在する。歴史の霧のなかから「クニ」があらわれたのは、慶長5年7月1日に御所朔平門外の近衛邸で舞い踊ったその時だけである。
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大徳寺塔頭の高桐院 説明板にも細川ガラシャの墓と並び出雲の阿国の墓が銘記されているが場所は不明(非公開?)だった 千利休の邸宅を移築したと伝わる書院から江戸初期作庭の庭を眺める

隆達節を聞ける最近の映像作品は、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」(2011年放送)第10話の柴田勝家が自決する前夜の宴のシーンなのだが、そのDVDが行方不明。録画した記憶はあるのだが。
参考
小説「出雲の阿国」(上・下)有吉佐和子 中公文庫2002年改版
「戦国時代の流行歌 高三隆達の世界」中公新書2012年刊
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posted by y.s at 22:30| Comment(0) | 京都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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