2014年06月02日

大阪 かやくめし「大黒」 小津安二郎の「手帖」から

映画監督・小津安二郎の「手帖」より
 ○カヤクめし(大黒屋)
     大阪道頓堀から一つ南の筋。
     御堂筋を西入る角から二軒目

小津の手帖に書き留められた「大黒」(小津は「大黒屋」としている)に関するメモは以上で、実際に訪問したかどうかは不明(小津が残した詳細な「日記」には記載がない)。
訪問していたとすれば、1961年(昭和36年)の宝塚映画「小早川の秋」(東宝配給)の制作準備の期間(同年5月か6月頃)であろう。この時期に頻繁に訪れていた淀屋橋の和菓子老舗「鶴屋八幡」を除いては、一度きりの訪問であったと思われる大阪市内の店舗がいくつか「手帖」と「日記」にそれぞれ記されている。江戸焼うなぎの「菱冨」(宋右衛門町)、「美々卯本店」(平野町)などがそうだが、おそらく「大黒」にも足を運んだと思われる。 
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「大黒」は小津のメモ通りの場所で現在も営業している (左写真)御堂筋西側 画面左端の路地 <大阪道頓堀から一つ南の筋。御堂筋を西入る角から二軒目> (右写真)簡単な修繕を施したぐらいで当時と同じ佇まいのまま
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暖簾に染め抜かれた「創業明治35年」 (右写真)暖簾の向こう側を店内から
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小津安二郎が<カヤクめし(大黒屋)>と店名より先に書いた「かやく御飯」(中550円) 大・小サイズもある (右写真)さわら焼物
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小津安二郎、池波正太郎が目にした店内や座ったであろう椅子に感慨を深めながら箸(はし)をすすめる・・・そのせいか「かやく御飯」の脇にスマホのコードが写り込んでいることに気が付かなかった

また、作家・池波正太郎も芝居の脚本を書いていた頃の「大黒」訪問の回想を文章に残している。 「大阪ところどころ」より抜粋。<<むかし、芝居の脚本と演出で暮していたころの私のホーム・グラウンドは{新国劇}であった。(略)(定宿の大宝ホテルで)朝飯をすますと、道頓堀を歩いて新歌舞伎座へ出かけ、公演中の劇団の人たちと打ち合わせなどをするうち、昼すぎになる。自分の出番を終えた辰巳(たつみ)柳太郎と共に昼飯に行くのが、御堂筋の西を少し入ったところにある{大黒}(だいこく)である。名物の{かやく飯}に、熱々の粕汁(かすじる)か味噌汁。それに焼魚をとって食べるそのうまさは、旅に出ていることだからというのではなく、どこの家庭の日常にも食膳に出されるような変哲もないものが、これほどにうまいのは、やはり大阪の、知る人ぞ知る食べ物屋だからだ。>>(「散歩のとき何か食べたくなって」に収録)
「大黒」大阪市中央区道頓堀2-2-7
    営業時間11時30分〜15時(中休み)17時〜20時
    定休日 日曜(祝も)・月曜
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難波(御堂筋沿い)の新歌舞伎座(閉鎖) 池波正太郎がここで台本の打ち合わせなどをしていた 右方向に御堂筋をゆくと「大黒」
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参考
池波正太郎「散歩のとき何か食べたくなって」新潮文庫1976年刊
小津安二郎の「手帖」(「東京グルメ案内」巻末収録)朝日文庫

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目白台 関口フランスパン 小津安二郎の日記からhttp://zassha.seesaa.net/article/384278954.html
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大阪 江戸焼うなぎ 菱冨 小津安二郎の日記からhttp://zassha.seesaa.net/article/384355963.html
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京都 漬物「八百伊」と「村上重本店」 小津安二郎の手帖からhttp://zassha.seesaa.net/article/387443287.html
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神戸 生田町 フロインドリーブ (旧神戸ユニオン教会)http://zassha.seesaa.net/article/385179644.html
北鎌倉 小津安二郎 山ノ内の新居(終焉の地) 「日記」からhttp://zassha.seesaa.net/article/390097307.html
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posted by t.z at 00:45| Comment(0) | 大阪osaka | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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