<< 先日、角川書店より新刊が出たのに合わせて、またぞろサイン会を開いて頂いた。昨年夏の、池袋においてのそれ以来、都合五度目となる今回の場所は、神保町の三省堂本店(注1)であった。これは以前に別のところでも書いたことなのだが、私はこの三省堂本店には格別の思い入れがある。十四、五歳の頃から神保町の古書店街をウロウロし、中学卒業後(注2)に一人暮らしをするようになってからは更にその頻度が高まり、往時の夏場はもっぱら該店で涼を取るようになっていた。即ち、鶯谷の三畳間(注3)から歩いて神保町までゆき、目当ての数店の古書肆をのぞく前に冷房の効いた該店(か、東京堂書店のどちらかで)にて涼みがてら新刊書の立ち読みをするのである。
往時、滅多に銭湯に入らなかった私の手は、二六時中汗と脂とでネチャネチャになっていたに相違ないが、その手でもって・・・・・(以下、ばっちいので略) >>
(靖国通り沿いの三省堂書店神保町本店ビル。神保町古書店街で三〜四指に入る明治期からの老舗。)
注1 1881年(明治14年)4月、現在と同じ場所で創業(初代店主亀井忠一、個人経営)。創業当時は古本屋だったが、明治25年4月10日の神田大火災で初代店舗焼失、再建時に新刊書専門店に転換。
注2 東京都町田市立М中学校(秘匿されているようなので伏字*独自調査)。
注3 JR鶯谷駅北口から徒歩5分ほどのラブホ街を抜け切る寸前附近。正岡子規邸跡の少し駅寄り。木造2階建てのアパートの惨状間。その反動からか、売れ出してからは、御苑前・滝野川と高層マンションの上層階暮らしが続いている。
「下手(したて)に居丈高」西村賢太2014年刊(週刊誌「アサヒ芸能」連載)
参考 「三省堂書店百年史」(社史)1981年刊
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