詩人萩原朔太郎、乱歩の弟子であり金田一耕助を生みだした探偵小説家横溝正史までが、乱歩を凌駕する回転木馬の耽溺者であったことが乱歩自らの言葉によって明かされている。萩原朔太郎の詩集「氷島」におさめられた詩「遊園地(るなぱあく)にて」に因んで命名された前橋公園の「るなぱあく」に、現在も稼働し続けている国内最古の電動木馬(国の登録有形文化財指定)があることは有名。
旧浅草四区にあった浅草木馬館(元は昆虫館)。手前が現在の木馬館(演芸場として営業)で奥隣は旧水族館、その2階に川端康成の小説「浅草紅團」で有名なカジノフォーリーがあった。二つの建物の間にある細路地について語ることができれば、かなりの浅草通といえるだろう。戦前から木馬館の場所は変わっていない。
江戸川乱歩「探偵小説十年」より。
<<「探偵趣味」には初めての小説(*「木馬は廻る」)であった。取るに足らぬ小篇であるが、私自身はそんなに嫌いではない。この小説も前の「浅草趣味」の続きみたいなもので、浅草の哀調(哀調なんて当時時世おくれの調子であったが)を語らんとしたものだ。木馬と云えば、私達はよく浅草散歩をして、子供の仲間入りをして木馬に乗ったものである。横溝君(*弟子の横溝正史)など最も屢々乗ったのではないかしらん。按(おも)うにこれは、どうやら宇野浩二の小説の影響らしいのである。メリー・ゴー・ラウンドから転がり落ちる善人の物語を、私達はどんなに涙ぐましく、且つほほえましく耽読したことであろう。>>
イメージ画像=浅草花屋敷の回転木馬(メリーゴーラウンド)、戦前はゲートを入った左側に設置されていた。
<<乗って見ると、木馬の適度の震動と、あの耳を聾(ろう)するジンタ楽隊の音楽が、身体にも心にも、快い按摩(あんま)の作用をして、それを降りて、子供の見物の群れをかき分けて、館の外に出た時には、シーンと心が静まって、何とも云えぬすがすがしい気持になっているのだ。
ごく近頃、去年の秋であったか、まことに久方振りで、私はあの懐しい浅草木馬に乗ったことがある。連れはその頃知合いになった詩人の萩原朔太郎氏で彼も亦(また)木馬心酔者であったから、私が恥しがるのを無理に誘って、彼は木馬に、私は自動車にゴツトンゴツトンと乗ったのである。その時、萩原氏と公園の古風な茶店でお茶を呑みながら、通行の人々を眺めながら、博覧会の余興について、昔々のパノラマ館の魅力について、それらの醸し出すノスタルジアについて (ノスタルジアとは何と久万振の言葉であったろう)語り合ったことである。>>
木馬館1階の壁面を利用して懐かしい木馬(レプリカ)が展示されている。
江戸川乱歩「木馬は廻る」大正15年9月執筆、雑誌「探偵趣味」に同年10月発表。
江戸川乱歩リンク
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麻布竜土町 明智探偵事務所をさがしてhttp://zassha.seesaa.net/article/381667672.html 1
名古屋・栄 白川尋常小学校跡 江戸川乱歩 「私の履歴書」よりhttp://zassha.seesaa.net/article/443495724.html
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大阪守口 天井裏への誘い 江戸川乱歩「屋根裏の散歩者」より http://zassha.seesaa.net/article/294747121.html?1494000764
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