

(上下写真)現在も変らず同じ場所にあるアイビーホール青学会館。
<<知り合って4年目の夏(1971年7月7日)に、青学会館で結婚式を挙げた。私は母に縫ってもらったウエディング・ドレス、彼は一張羅のスーツで、牧師の問いかけに、神妙な面持ちで「誓います」と答えた。結婚式の最中彼はあがっていたようで、リングを逆さまに私の指にはめようとしたり(デザインリングなので)、ウエディング・マーチにつれて歩く時の足を出す順序を間違えたりして、私をハラハラさせた。そんなことに気を取られていた私は、式の間一滴の涙もこぼさずに終わり、後で母からイヤミをいわれた程だった。
式の後の大変な披露宴(新婦のヌードがスライドで写し出され、それを見ていた田舎のおばあちゃんは、家に帰ってからショックのあまり2、3日寝込んだという)も終わり、冷汗をかきながら新幹線に乗り込み、そこでやっと正常な神経に戻れた私であった。>>
「わが愛、陽子」1978年朝日ソノラマ刊(荒木陽子の書下しエッセイ7篇収録)より結婚シーンを抜粋。

荒木氏のアシスタントがニコンFで撮った青学会館での記念写真(「天才アラーキー写真ノ愛・情」より)。
記念写真とともに、この写真についても語っている。一部を抜粋。
<<うちの一の子分に「一発撮れ」って言ってカメラ渡して、ぽ〜んと撮ったやつなんだけど、ルール違反なの、こういうのは。写真館の収入にならんでしょ。(略)>>

青学会館のフロントロビー。仰々しくなく落ち着いた雰囲気の結婚式場で青山学院大学の隣と立地環境も華やか。最寄駅は地下鉄表参道駅。

上下2枚の青学会館内の写真はフロアマネージャー氏の許可有り。
結婚までの経過(いきさつ)をエッセイ「あー夫婦だなあ」(文・荒木陽子)でも語っている。
<<モディリアニの杏型の瞳の女や、ゴダールの映画や、インドシルクのスカーフや、ニーナ・シモンの弾き語り・・・の魅力を私に伝えてくれたのは彼である。
彼は私の中に眠っていた、私が大好きな私、を掘り起してくれた。彼に逢っていなかったら、そんな事には気づかずに過ぎたかも知れない。ごくフツーの感性の男の人と結婚し、寝ぼけ眼のまま一生を送ったかもしれない。男の人と大人のつきあいをしたのは荒木が初めてであった。であるからして、アラ、この人、××が××で××なのねー、などと他の男と比較する事もなく、あー男ってこーゆーモノだったのか、と素直に納得しちゃった私は、三年間のツキアイの後、母や友達の不安をヨソに、彼と結婚したのである。互いに自宅に住んでいたものだから、同棲もしなかったし、彼に隠し女がいてスッタモンダ、なんて事もなかった。ただ結婚式が、実に冷や汗もんだったのだ。まず、結婚式の案内状が変テコだった。普通は、両家の名前が入った寿のシールつきの角封筒である。ウチの場合は、封筒を開けると中にハデな祝儀袋が入っていて(これを受け取った人達は皆一様にギョッとしたと言う)、その中に、二人の写真入りの、私達は結婚します云々の文字が記された葉書が入っていた。更に引出物はというと、民芸店などでよく見かける竹製のフクロウの飾り物(風が吹くと、下に下がっている竹筒が鳴る)。極めつきは披露宴のスライド上映である。私のヌード写真がデカデカと写し出され、親戚一同はシーンと静まり返り、この余りにぶっとび過ぎている状況をどう理解すればよいのか、という顔をしていた。この披露宴のショックがもとで、ウチの親戚のお婆ちゃんは寝込んでしまったのだった。略)>>
参考:「荒木陽子全愛情集」2017年港の人(鎌倉市)刊
「天才アラーキー写真ノ愛・情」2011年集英社新書刊
荒木経惟リンク
世田谷 写真家荒木経惟(アラーキー)の陽子もチロもいない新家http://zassha.seesaa.net/article/400445825.html
豪徳寺 写真家荒木経惟(アラーキー)と陽子とチロの遺家http://zassha.seesaa.net/article/284210221.html
原宿 荒木経惟「文化写真」 展(ミニギャラリー) http://zassha.seesaa.net/article/454860200.html
京都・四条河原町 喫茶・築地http://zassha.seesaa.net/article/455847835.html
長崎・鍛冶屋町 レストラン銀嶺 「荒木陽子全愛情集」よりhttp://zassha.seesaa.net/article/455985556.html
鎌倉 近代美術館付属カフェ<ラ・ミュゼ> 「荒木陽子全愛情集」よりhttp://zassha.seesaa.net/article/456022608.html
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