2018年02月02日

京都 錦市場 荒木陽子「長編旅日記 アワビステーキへの道」より

錦市場(にしきいちば)は、寺町通から高倉通までのアーチに覆われた錦小路通(幅約3m余)の両側に隙間なく軒を並べた生鮮食材や加工食品などを扱う商店の総称。鮮魚川魚、干物、京野菜、茶葉、玉子、乾物、漬物、おばんざい、湯葉、京菓子、刃物等々の多種多彩な品目を、人混みをかき分け、眺め歩くだけで楽しめる。京都観光の鉄板スケジュールとして多くの観光客が錦市場回遊を取り込んでいる。
京都に立ち寄った写真家荒木経惟(のぶよし)・陽子夫妻は、さっそく夫妻のポリシーとなっている別行動をとることに。陽子さんが、さて何処に行こうかと思い悩んで向った先が、この錦市場であった。
nishiki01.jpg
この頃(2013年6月撮影)までは、京都観光は日本人客が主体で、特別なイベントが催されない限りそれほど混み合うことはなかった。が、この年の後半から異常なまでにアジアからの観光客が急増し、錦市場を含む人気観光スポットは、たとえ平日でも人をかき分けながら歩くことが当たり前となってゆく。
nishiki02.jpg
市場と名は付くが早朝(午前7時)はまだひっそりとしており人影はまばら。

荒木陽子エッセイ「長編旅日記 アワビステーキへの道」(1985年)より抜萃。
<<さて、自由行動の身であるので、どこへ行ってもよいのだが、なにしろ五時半の待ち合わせまで二時間くらいしかない。これでは電車に乗ったりはできない。往復するだけで終わってしまう。それじゃあどーしよう、と私は考えた。近くで素敵に楽しい所といったら? そーだ! 今までまだちやんと歩いた事がない<錦市場>に行く事にしよう。<錦市場>の中へ入って行くと、水曜日のせいで、ところどころの店が休んでいる。そのせいか通りがややうす暗く感じられる。>>
nishiki03.jpg
<<しかし、それぞれの店は活気があってなかなかにおもしろい。魚屋に並んでいる物に私はとても興味をもってしまった。まず驚いたのは、てっちり用のフグを売っているのだ。そればかりか、フグサシ(こちらではてっさ)まで売っている。大体一皿千三百円。いいなあ、魚屋さんでフグサシが買えるなんて、毎日でも家で食べられるじやないか。それからキレイな色の糸縒や大きな生タラコ(東京では余り見かけない)、その生タラコの湯がいた物も売っている(輪切りになっているので最初は何かと思った)。>>
nishiki04.jpg
京都近郊、丹波、若狭、明石などの産地から運び込まれる食材で錦市場は成り立っている。

<<若狭方面からの魚介類が多い。新鮮そうな甘海老(色と艶が東京の魚屋で見るのとは大違い)、大きなズワイガニ、上品な若狭ガレイ。焼き魚屋さんというのもある。見事にテリのある焼き上りの、ぐじやはもが一串に二切れついて七百円くらい。これが実に実にうまそう。買っていって熱々のごはんで食べたら、ウマイだろなー、と思いつつ、ぽ―っと見ていたら、店員のオ兄さんに不審な顔付をされてしまった。湖でとれる小魚の甘露煮も多く目に付く。諸子(モロコ)や若さぎの甘露煮などである。>>
nishiki05.jpg

nishiki06.jpg

nishiki07.jpg
<<こういった、東京の魚屋と大いに違う様子が私にはとても面白い。魚屋の違いに比べて、八百屋には余り大きな違いがない。それというのも、近頃東京の大きなスーパーなどで、京野菜も沢山置いてあるからで、水菜や京人参など見ても、見馴れているので普通である。ただ呼び方の違いが面白い。サヤエンドウの事を三度豆といい、菜の花の事をナタネという。>>
nishiki08.jpg
<<私はプラブラと眺め歩きをしながら色々な物を買った。振り袖という名前が付いたトックリ入りの伏見の地酒(トックリに着物姿の女の絵がついている)六百五十円、笹かれい二枚(一枚三百八十円)、昆布で編まれた籠二ケ(一ケ八十円)、この昆布籠は油で揚げると食べられるのだが、これを買ったお店には様々な物が置いてあった。>>
nishiki09.jpg
<<大豆や小豆などの豆類、麩嘉の生麩、特にこの生麩が実にキレイだった。中年女性の客がやって来て、「もう桜の形になったんやねー」と言いつつ、切り口が桜の形をしている生麩を見ていた。すると冬の季節には梅かなんかの生麩が出るワケかしら、風雅なモンですねー。このお客は蓬麩を買っていった。私もその蓬麩を買いたかったのだが、生麩を料理した事がないのでビビつてしまった。(略)>>
nishiki10.jpg
京生麩<麩嘉(ふうか)>(錦市場支店)。本店のようなどっしりとした老舗感はないが同じ物が手に入る。
nishiki11.jpg
<麩嘉>の天日で乾燥させた散し麩。
nishiki12.jpg
漬物<枡伍(ますご)>で買い物(最上段の写真に写っている店番のおねえさんの手)、中身は好物の
千枚漬パック。京都に着くと同時に<枡伍の千枚漬>を買って、その日のオツマミとする。店は京都の
あちこちに展開しているので困らない。

*撮影は2013年〜2015年。
「長編旅日記 アワビステーキへの道」1985年初出。
「荒木陽子全愛情集」2017年港の人(鎌倉市)に収録。
荒木経惟リンク
世田谷 写真家荒木経惟(アラーキー)の陽子もチロもいない新家http://zassha.seesaa.net/article/400445825.html
豪徳寺 写真家荒木経惟(アラーキー)と陽子とチロの遺家http://zassha.seesaa.net/article/284210221.html
原宿 荒木経惟「文化写真」 展(ミニギャラリー) http://zassha.seesaa.net/article/454860200.html
京都・四条河原町 喫茶・築地http://zassha.seesaa.net/article/455847835.html
渋谷 青学会館 荒木経惟・陽子夫妻の挙式会場http://zassha.seesaa.net/article/455890811.html
長崎・鍛冶屋町 レストラン銀嶺 「荒木陽子全愛情集」よりhttp://zassha.seesaa.net/article/455985556.html
鎌倉 近代美術館付属カフェ<ラ・ミュゼ> 「荒木陽子全愛情集」よりhttp://zassha.seesaa.net/article/456022608.html
渋谷宇田川町 ラブホ・オリエント 「荒木陽子全愛情集」よりhttp://zassha.seesaa.net/article/456164596.html


【関連する記事】
posted by t.z at 00:55| Comment(0) | 京都kyoto | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。