2018年05月26日

江戸橋 江戸橋地下道 東野圭吾「麒麟の翼」事件現場

東野圭吾(ひがしのけいご)の長篇ミステリー小説「麒麟(きりん)の翼」(2011年)から、重傷を負った被害者が日本橋麒麟像に至って倒れ込むまでの経路を、点々と血痕が認められる移動経路をたどって事件現場に向かってみる。謎めいた事件の発生現場は、昼でも人通りの少ない首都高速江戸橋料金所(出入口)の下をくぐり抜ける歩行者用地下道であった。犯行現場周辺の描写は現実とたがわないドキュメントタッチであり、再現(写真)は容易である。

<<その後、改めて皆で安田巡査から話を聞いていると、所轄の藤江(ふじえ)という刑事課の係長が挨拶にやってきた。四十過ぎと思われる、痩せた男だった。藤江によれば、犯行現場と思われる場所が見つかったという。
「ワンブロック先です。御案内します」
藤江がそういって通行止めになっている車道を歩きだしたので、石垣らと共に松宮も後についていった。
左側の歩道では、一定の間隔を置いて鑑識課員が活動している。
「歩道に、ところどころ血痕があるようなんです。さほど量は多くないようですが。被害者は血を流しながら移動したということでしょう」
藤江が説明した。歩道のすぐ横には有名な証券会社(*野村証券)の建物がある。夜の闇の中にあっても、その外観は歴史を感じさせる。被害者は胸に刃物が突き刺さった状態で、一体何を考えながらこの道を歩いたのだろう。>>
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有名な証券会社(*野村證券(株)日本橋本社)のレトロな建物とその前にある中央警察署日本橋交番。左手が日本橋。被害者はこの交番勤務の巡査に視認される。野村證券の右側の道をたどると江戸橋際に至る。

<<「この道は、あまり人が通らないんですか」石垣の質問に、藤江は頷いた。
「昼間はともかく、夜は少ないと思います。証券会社のほかは何もない通りですから」
「重傷の人間に気づく者がいないとしても不思議じゃないと」
「そういうことです」
「被害者の身元は判明しているんでしたね。家族には連絡したのかな」
「連絡済みです。今、病院に向かっているはずです」
案内された場所は、首都高速道路江戸橋入り口のすぐ手前だった。
歩道から地下に潜る道がある。>>
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江戸橋上からみた犯行現場(地下道)への入り口。

<<だが今はテープが張られ、立入禁止になっていた。多くの機材が持ち込まれ、鑑識課員が動き回っている。
「御存じかもしれませんが、この地下道をくぐつて、あの江戸橋の入り口に出られます」
藤江が指差した先には、日本橋川にかかる江戸橋がある。
「地下道は十メートルちょっとの短いものですが、その途中に血痕が残っていたんです。そこから先では血痕は見つかっておりません」
「つまり、この地下道の中が犯行現場だと」
石垣の問いに、「そう考えております」と藤江は答えた。>>
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事件現場の江戸橋地下道へ下りる階段。
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<<地下道は思ったよりも狭く、幅は三メートルほどしかなかった。天井も低く、長身の人間ならばジャンプして手が届くだろう。長さは約十メートルといったところで、その中間あたりの地面に血痕が落ちているのがわかった。量はさほどではない。五センチほどの黒ずんだ染みになっている。
ほかには特に目立った痕跡はないようだ。松宮たちはそのまま進んだ。地下道の反対側では石垣たちが待っていた。そこからは江戸橋を渡る歩道に繋がっている。>>
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右へ折れた先で、ナイフが一瞬鈍い光を放って突き刺さり、胸から鮮血が吹き出でる。が、被害者は気丈に料金所側の出口へ向かってスロープを上がり、夜間はほとんど人通りのない証券会社に沿った並木道を点々と血をしたらせながら日本橋に向ってよろめき歩く。
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地下道出口スロープと首都高江戸橋料金所。左端のビルが、江戸橋から日本橋まで日本橋川に沿って建つ巨大な証券会社の建物。
その男がシャツを血に染めて日本橋交番の前を通り過ぎたのは、午後九時になろうかという頃だった。
そしてその男は日本橋中央に置かれた麒麟(きりん)像の装飾柱下でうずくまり動かなくなった。
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(*注釈)は原文にはありません。
東野圭吾(ひがしのけいご)長篇小説「麒麟の翼」2011年3月講談社刊(書き下ろし作品)より抜萃。


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posted by t.z at 00:08| Comment(0) | 東京東南部tokyo-southeast | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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