2018年05月26日

三田 人力飛行機舎跡 寺山修司少女詩集から  

寺山修司の映像作品制作の拠点として港区三田4丁目に組織したのが<映画実験室 人力飛行機舎>であった。制作作品は、寺山の代表作(「さらば箱舟」「上海異人娼館」「田園に死す」「草迷宮」など)が網羅されている。当時、人力飛行機舎が拠点とした三田・願海寺境内の建物(写真)は、現在取り壊されており存在しない。尚、プロダクション人力飛行機舎は九條今日子(元寺山修司夫人・寺山映子)さんを代表として現在も活動を継続している。
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 詩篇「人力飛行機のための演説草案」
おれは自分を飛ばすことにばかり
熱中している一台のグライダーだった
麦は水の中でも育った
鳥が翼で重量を支えていられるのは ある速度で空気中をすすむときに
まわりの空気が抵抗で揚力をおよぼし
それが鳥のさびしさと釣合うからだ
おれはアパートの陽あたりのわるい十一月の壁に 鳥のように羽ばたいて飛ぶ オーニソプブ
ターの設計図を記述した
(略)
  寺山修司詩集「ロング・グッドバイ」から
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 詩篇「飛行機よ」
翼が鳥をつくったのではない
鳥が翼をつくったのである
少年は考える
言葉でじぶんの翼をつくることを
だが
大空はあまりにも広く
言葉はあまりにもみすぼらしい
少年は考える
想像力でじぶんの翼をつくることを
いちばん小さな雲に腰かけて
うすよごれた地上を見下ろすと
ため息ばかり
少年は考える
リリエンタールの人力飛行機
両手をひろげてのぽったビルディングの屋上に
忘却の薄暮がおしよせる
せめて
墜落ならばできるのだ
翼がなくても墜ちられるから
ああ
飛行機
飛行機
ぼくが
世界でいちばん
孤独な日に
おまえはゆったりと
夢の重さと釣合いながら
空に浮かんでいる
  「寺山修司少女詩集」から 
jinrikihikohki03.jpg
*撮影は2007年。
各詩篇は「寺山修司全詩歌句」1986年思潮社より抜萃。
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posted by t.z at 23:48| Comment(0) | 東京東南部tokyo-southeast | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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